10月, 2020 |

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第6回:戦略実現のためのインフラ強化


  
  
第5回はバリューチェーン、つまりは戦略軸にふれたので、今回はそれを実現するためのインフラについて考えてみましょう。ちなみに、インフラとはもちろん、一般的にいう社会基盤ではなく、企業の事業活動に必要不可欠な基盤と考えてもらうといいですね。

企業の業績を持続的に成長させるためには、売上を上げるための事業戦略(バリューチェーン)だけでは不十分で、戦略実現のためのインフラ構築が不可欠となります。

よくある間違いは、売上規模が大きくなって扱う資源(人・物・金や情報)が増えるのに、新たなインフラ構築が成長のスピードに間に合わず、売上が急激に下がってしまうケースです。

逆に、インフラ投資は固定費の増大を招き、過剰な体制は高コスト体質につながる危険性があります。そのため、戦略実現とは関係のない、インフラ投資は避ける必要があります。今回の新型コロナのように、一時的に大きく業績が悪化した時に、そのリスクに耐えられるような柔軟なインフラを構築しておくことも重要です。

では、インフラとは何かというと、人事・総務・財務・情報システムなどの支援部門と組織・仕組み・組織スキル・風土などの全社に関わる要素を意味します。ただ、多くの場合、インフラや人の問題はデリケートで難しい問題なので避けて通りがちですが、戦略に合わせて進化をさせないと企業の将来はないといえます。
  
  

  
インフラの問題は、数値で客観的に評価できないことが多いので、戦略に比べて問題発見が難しくなります。問題点を明確にするためには、起こっている現象から問題のカギを見つけ深堀していく必要があります。例えば、“人がよく辞める”、“会議の発言が少ない”、“資料の提出や承認に時間がかかる”は表面的に起こっている現象ですが、その根底には、人事制度、非効率なシステムなどの根本的問題が潜んでいる可能性があります。課題となる現象を発見できると、それはなぜか?と問いかけ深堀していくことで、根本原因に近づくことができます。

戦略やそれに見合ったインフラの強化には、人の巻き込みが重要となります。問題解決実現のカギは「人」であり、最大の阻害要因も「人」であるからです。だからこそ、その人たちの育成と信頼を得られないと成果を上げることは難しい。嫌なことから逃げない、しんどいことにも取り組む、改善策や新しいことを考える、それらを実現する方法を何取りも考える、といった、まさに「人間の業」との闘いに挑める人が重要です。そのような人たちが強い情熱とコミットメントを持ち、他の人を巻き込み、気持ち的にも何としてでも取り組みたいと思わせる仕掛けや仕組みを作ることも大事になりますね。
  
  

文責:齋藤顕一

本メッセージの著作権はフォアサイト・アンド・カンパニーおよび齋藤顕一にあります。
無断転載はご遠慮下さい。

第5回:企業の成長の源泉となる“バリューチェーンの強化” とは?


  
  
皆さんは、自分の働いている会社のバリューチェーンを描けますか?
  
  

バリューチェーン(VC)とは“会社が価値を生み出すために行っている事業の大きな流れ”

バリューチェーン(VC)とは、マイケル・E・ポーターが「競争優位の戦略」で1985年に提唱したビジネスのフレームワークです。事業を顧客にとっての価値を創造する活動ととらえ、それらの活動を分解し、競争優位を築くために各活動を分析していく考え方です。実際にビジネスの場で活用する場合には、“会社が価値を生み出すために行っている事業の大きな流れ”と捉えて、VCを描いてみるといいでしょう。

バリューチェーンこそが競争力の源泉であるため、各構成要素を競争相手よりも強くすれば、相対的な競争力があがり、シェアが伸びることになります。

シェアが上がれば、対象市場が成長しているなら売上も大きく伸びます。逆に市場が減少していたら、少々シェアをあげても売上は伸びにくい。その場合、業績を高めるためには、コストを削減し利益を増やすか、大幅にシェアをあげることが難しければ、対象市場を拡大し、新たな市場に参入することが必要になります。それも難しい場合は、新規事業を検討する必要もでてきます。
  
  

VCの各活動を具体化し、重要課題を発見することこそが問題解決につながる

VCを描くには、自分の会社の事業を、“時間の流れ”で考えます。メーカーなら、はじめに研究開発や製品開発があり、製品を作るための原材料や部品の調達や製造を行い、それを拡販するためにマーケティングし、流通チャネルを通じて販売し、購入者に満足してもらうためにアフターサービスを行う。というのが基本の流れとなるでしょう。

この、大きな流れを描いた後、そのなかでの重要業務を更に書き出します。次に、それぞれの業務をイメージしながら、なにがうまくいっていないのか?と考え、具体的な課題と原因を考えます。

これが上手くできると、根本原因が分かり、正しい解決法を考えることが出来ます。ただし、ここで表面的な問題しかとらえることが出来ないと、解決策は対症療法となり、業績を上げることは困難です。
  

  
  

客観的に課題の大きさを理解し、外部も含めてVC全体を強化することが大事

VCを強化し、売上をあげるためには以下の3つの視点が必要となります。
1.VCの各要素の課題を書き出すときには、KPIデータの分析を行って、客観的に課題の大きさを理解する必要があります。そうしたうえで、その課題の原因を徹底的に理解するのです。それが出来て初めて、効果的な解決法を考えることができるのです。

2.VCは、VC全体の価値を最大化することが大事なので、自社でやっても投資効率が悪いものについては、外部企業との協業を検討しましょう。すべてを自社で完結させることにこだわる必要はありません。強化すべき部分を決め、自社の強みに集中的に投資します。

3.VCの構成要素がしっかりと連携されていることが重要です。一つ一つの構成要素を強化させればさせるほど、自己完結して縦割りになりがちです。会社全体の最適化を考えて、各部門の連携体制を構築するのです。
  
  

新型コロナを乗り越えるためには、VC自体を柔軟に変化させることも必要

今回の新型コロナで危機を乗り越えようとしている多くの会社の特徴は、VC自体を柔軟に変化させていることです。飲食店が、店舗での営業の代わりにお弁当やテイクアウトメニューを作るのはバリューチェーンにおける“商品開発・製造”と “販売”の方法を変えているし、各地食料品“生産者”が従来の“流通”を通らず消費者に直接ものを“販売”しているのも例になります。今後はバリューチェーンをいかに市場の変化や顧客・社会のニーズに合わせて“柔軟”に変化させるかが、将来の成長に大きくかかわってくると言えます。
  
  

Tips ~やってみよう!考え方のヒント~

実際にやってみてください。バリューチェーンを時間の流れで考え各活動を具体化し、重要課題を発見することこそが問題解決につながります

文責:齋藤顕一

本メッセージの著作権はフォアサイト・アンド・カンパニーおよび齋藤顕一にあります。
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第4回:質問力を身につける


  
  
今回は情報収集の中でも特に重要な質問力についてお話しします。
  
  

問題に直面したら対応策を考える前に、まずは事実を理解するために人の話を聞いてみる

先日、人材派遣会社の社長さんと話をしているときに、その人は次のようなことを言ったのです。「今回の新型コロナで登録している派遣社員の人が不安を抱えているようで、そのために何ができるか考えているんです。給与補填や万が一解雇になった場合の保障など何をすればいいのか、競合会社の取り組みなども見ているのですが、仕事が大幅に減ったこともありなかなか悩みます・・・。」

それを聞いた僕は、「対応策を考えるのは大事だとは思うけど、まずは、派遣社員の人たちがどんなことを不安に思っているのか、どのようなことを会社に期待しているのかを聞いてみたらどうだろう?」とお話ししました。「確かにそうですね、まずは話を聞いてみます」ということで、その場は終えました。

その後、どうなったのかを聞いてみると、「相手にいろいろ質問し、自分が考えている保障や雇用の方針を直接話す機会が出来たことで信頼関係が構築され、良い口コミが広がり、仕事を止める人がいなかったのです。いや~良かったです」とのこと。
  
  

自分の頭だけで解決策を出し、完結すると、結果的に対処療法や実現性に欠けた取り組みになりがち

これは実は、多くの“優秀”な人でも陥る落とし穴で、自分の頭の中だけで解決策を出して完結してしまうのです。ある経営者は、自分の強い想いで“特定製品市場を狙う”という突然の新事業参入を通達しました。十分な市場調査や潜在顧客へのインタビューも行われず、事業展開を強引に進めた結果、新市場開拓は失敗に終わりました。自分の頭の中や一部の人だけの話を聞くだけで導き出した解決策は、対処療法だったり、実現性に欠けていたり、良い施策を導き出せません。まずは、成長機会とその機会獲得に必要な取組方を見つけるために、インタビューする(質問する)ことが重要だったというわけです。
  
  

自分の考え方の悪い癖を客観的に理解していないから良い質問が難しい

では企業の問題解決における必要な質問力について触れていきましょう。

質問といっても、自分が知らないことを聞く、理解できなことの説明を求める、などは自分なりに工夫ができます。ただ、相手の課題を聞き出し、解決の方法を一緒に考えたり新しいアイデアをお互いの対話から発見するための質問ということになると“新しい学び”が必要になります。なぜ、そのようなことが重要かというと、お客様企業の業績を高めることで、信頼を獲得することができて、その結果、自社の売上が増えるからなのです。

質問の難しさはいろいろあります。自分が聞きたいことをそのままぶつけてしまう、質問が具体的で細かすぎる、相手の応えに対して更に質問ができない、相手の質問に応えることができないなどです。なぜ、そんなことが起こるかというと、商談は”自分の利益“だけを考えて行うし、ロジック(秩序正しく考える方法)も学んだことがないし、自分の話し方、つまりは考え方の悪い癖を客観的に理解したことがないからなのです。
  
  

問題解決における“質問”は、“分からないことをただ聞く”のではなく、お互いの価値を引き出したり、新たな価値創造の取り組みといえる

では、質問する上で大事なのは何でしょうか?まずは、問題解決における“質問”は、“分からないことをただ聞く”のではなく、お互いの価値を引き出すための取り組みと認識する必要があります。そのうえで、それを実現するための質問力の基本的なことをまずしっかりと理解して実践する必要があるのです。基本的なこととは次のようなことです。

1.まずは、質問するときの目的を明確にすることです。商談も質問から始まるとは思うのですが、自分の製品・サービスを売ることではありません。相手企業が業績を上げることができない根本原因を聞きだすことで、その解決提案をすることです。相手のことを考えないで、自分の売上獲得だけの商談は、相手から嫌がられるのでNGなのです。

2.次に、相手の関心がどこにあるのかを理解します。そのためには、最初は大きな質問から始めます。例えば、どんなことにお困りなんですか?というのが大きな質問になります。相手からは、売上があがらない、利益が出ない、人がいない、などの応えが得られるでしょう。大きな質問をした場合の最初の答えが、最も大きな関心になるのです。

3.普通はそこで、大変ですね~で終わってしまう(笑)。大きな関心事が判ったのですから、なぜそれが一番大きな問題なのでしょう?と、相手の言ったことの意味を、具体的に理解する必要があるのです。そのためには、自分が納得できるまで、深堀して質問し続けることが重要になるのです。売上が大きな問題だとした場合、その原因は3通りあります。相手企業の営業活動の問題、販売商品の問題、その先のお客様の問題ですが、それだけでは解らないので、更に中身について質問をし続けるのです。

4.相手企業の問題がいろいろ解ったところで、それらが意味するところ(問題の本質)を理解するために要約が必要になります。この要約には論理的思考が必要になり、それも新たに学ぶ必要があるのです。
  
  

文責:齋藤顕一

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第3回:情報収集とは?


  
  

情報収集のアプローチ次第で、目的達成が出来るかが決まる。もっとも重要な能力の一つ

情報収集は“どこのスーパーの大根が安いか?”、から“受験にはどの塾が良いのか?”などの身近なことから “売上が伸びない原因を知るために必要なデータはなにか?”などビジネスまでもカバーする、すご~く重要な活動ですよね。

最近の傾向としては、“ビックデータ”、“データサイエンス”が日常の言葉として目につくようになり、企業業績を高めるためにも必要だし、日常生活を豊かにするためにも理解することが大事と、データや情報が、ますます重視されるようになってきています。

でも、どのような情報を、どのように情報を集めると、本当の目的を満たせることができるかを、知っている人は極めて少ないのです。良い信頼できるデータは高く売れるということも、よく知らないのです。

正しい結論を導きだすには、正しい情報がないと無理なのです。今回新型コロナの影響でもメディアの出す情報の信憑性などについて書かせてもらったのやけど、情報は取り扱いに注意が必要やね。
最近では、UNDPがコロナ情報4割しか信頼できないと警鐘を鳴らしたりもしています。
  

国連開発計画(UNDP)は10日、SNS上に投稿された新型コロナウイルスに関連する約1億1200万件の投稿のうち、約4割が「信頼できない情報源からの発信」という調査機関の分析結果を発表した。
2020年6月10日 “SNSのコロナ情報、4割が信頼できず UNDPが警鐘”

  
  

解決されていない企業の情報収集の問題は多すぎる

さて、企業の業績に大きな影響を与えるデータや情報の収集に関してですけど、ひと昔の前と同じように、企業の問題は解決されておらず、いまだに多く存在しています。

①重要性への意識の低さ
② 正しい情報収集法を知らない
③ 専門性の担当者の不在

これらの問題が、情報量の肥大化と偏りによる混乱を引き起こしているのですけど、それに気が付いていないのです。情報は簡単にネットなどで手に入れることが出来るために、知る必要のない情報を取りすぎることや、自分の部門や自分にとって都合のよい情報だけに焦点をあてるため、情報量は増える物の、企業の業績が上がらない原因を知るためにデータや情報がわからないため、なんら成果につながっていないのです。
  
  

基本に忠実になれば、問題解決における情報収集はそれほど難しいものではない

では、問題解決における情報取集については、どのようにすればいいのでしょうか。まずは、やはり、必要な情報の目的を明確にし、フレームワークで必要情報を明確にして収集するという基本を忠実に実行することです。

情報収集をするにあたって(なんでもそうですけど)、最初に目的をしっかり決めるとその後のアプローチが非常にスムーズになります。

企業において改革プロジェクトを実施する場合は、「企業の業績向上施策を考えるのに必要な、売上・収益性・生産性・シェアに関するデータ、とそれらの数字の原因となる情報やデータ」と、考えるのです。

次に具体的に、どんな情報を集めるかですが、3C(市場・競合・自社)のフレームワークでとらえるというのも一つの手です。
  
  

市場の情報収集は、“大きな市場から小さな市場”、“長期の時系列”、“自分たちの強みから考える”から始める

今回は市場についての情報を集めるときに重要な考え方を説明します。

①最初から細分化した製品情報ではなく、大きい視点でまずは、自社の参入市場全体を見ます。“大きなところから小さな市場”をみていくのです。代替品市場があるならそれも見ておきましょう。最近は市場の情報がないというよりも“ありすぎる”ので、いくつか官公庁や業界団体の統計書を比較して選ぶことは基本になります。

②次に、市場を“長期の時系列の推移”を見ます。時系列で市場の動向を追うと自社が参入しているのは成長市場か、それとも衰退市場かがわかります。そして、自分たちの戦う市場をさらにミクロでみてみる。衰退市場だからといってミクロで見た場合チャンスがないわけではなく、たいていの場合チャンスが残っている市場も存在しています。

③対象にしている市場をさらに、製品市場別に分解して規模や成長度合いを理解していきます。その際に、“自分たちの強みの活かせる市場で確固たる地位を築くことを意識”してみてください。これは統計書の分析なので、スキルのある会社は誰でもできるのです。

例えば、規模と成長度合いを分類し、製品市場別に分解して規模や成長度合いを理解していく。自分たちにとって、どの市場が重要なのか、が可視化できるということなのです。
  

  

顧客の情報取集を正しくできると誰も気づいていない成長機会獲得につながる

市場の中に、もちろん顧客も含まれています。市場の数字は顧客の購買行動の結果なので、顧客の分析が正しくできると誰も気が付いていない市場セグメントを発見することが出来て、成長機会の獲得が可能になります。

①新たな成長を達成したいと考えるときは、とにかく、顧客の満たされていないニーズや期待を十分に理解することが不可欠。つまり、自分たちの製品やサービスを売るのではなく、顧客が求めているものを理解し、どのように提供するかを考えることが重要となります。

②顧客とは、普段取引をしている会社だけではなく、その先の最終消費者も含みます。その人たちのニーズを現場で聞いたり、観察を繰り返し、顧客を理解する方法が身についてくると、単なる年齢・性別の属性分類ではなく、よく似たニーズを持つ顧客のグループの存在に気が付く、それが俗にいう戦略的顧客のセグメンテーションになります。

③ 顧客から学ぶというのは、自社商品を売るヒントを得るためではなく、顧客に提供できる価値を創出するためです。新しい商品コンセプトやサービスコンセプトを開発することや、価格以外で提供できる価値を新たに作り出すことが重要になるということです。
  
  

今日のtips

市場の成長率と市場規模で分類して、自社の対象市場の評価をしてみると新たな攻略法についての発見があります。同じ考え方で顧客の評価もできます。自社にとって最重要顧客、重要、維持、低優先など、色付けすることで、対応の仕方を変えて効果と効率を高めるのです。
  
  

文責:齋藤顕一

本メッセージの著作権はフォアサイト・アンド・カンパニーおよび齋藤顕一にあります。
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