変革の際に踏み込まなくてはならない領域 |

変革の際に踏み込まなくてはならない領域

変革の際に踏み込まなくてはならない領域

問題解決アプローチ使って実際の企業の問題に取組み、論理的に導き出された解決法を実践すると確かに企業業績は向上する。
その取組に出来るだけ多くの従業員を参加させることで業績はさらに上向きに推移することも実証されている。
しかし、ある時点でなんか停滞感を感じ始め、月間ベースでの業績向上のスピードは遅くなることに気がつく。
取り組んでいることに“はずみ”がつかなくなってきているのだ。
なぜか。それはトップが全身全霊を込めて企業の変革にとりくまないことに起因することが多い。
新しい施策を従業員が実践することで成果はでるのであるが、それは今までやっていなかったことをやるから成果があがるのだ。
しかし、本当の企業の実力は、従業員が出来ることだけで達成できるのではなく、ともすればトップがやりたくない“人の問題や組織の問題”にもメスを入れることで初めて本当のものになるのだ。
トップが自らの生き方や経営観を変え、大きな勇気を持って取り組む必要があるのだ。

(斎藤顕一)

 
【解説】
 
継続的な業績向上を目指す企業のトップに求められることは極めて厳しい。
 
トップは単なる会社のシンボルでもないし、業績がすぐれた会社から学べることや大学教授が語る経営論を伝えることでもないし、自分がトップにいたった長い道のりで学習してきた成功体験を部下に語ることでもない。
まして過去の先輩たちが築いてくれた“正の遺産”に胡坐をかくことでもない。
 
トップは企業が目指すべき姿や方向性を示すことが大事なことは言うまでもないが、そのためにはトップは顧客それも企業にとって厳しい意見を述べてくれる企業や消費者の声を直接に聴き彼らを喜ばせる方法を考えることであり、従業員の話に耳を傾け人材を最大限に活用する方法を考えることなのだ。
 
そうすることで初めて、業績向上の施策を具体的に考えることができるし、正しい判断もできるからだ。

 
 
売上をあげるための取組は、多くの場合は事実データに基づいた結論であるため説得力もあり、トップもそれらの施策を遂行することにそれほど大きな抵抗を感じることは少ない。
 
しかし、これらの取組を最大限に生かすためには、その原動力となっている人の問題やその人たちの生産性を高めるための組織問題を解決する必要がある。
 
しかしながら、この問題は論理で説得しきれるものではないし、ともすれば感情の世界になるため、トップは出来れば避けたい課題なのだ。
 
その“避けたい意識”は従業員にすぐに見破られるものであり、変革の取組自体に限界を感じ始めるのだ。
 
結局、変革への取組をトップや役員がいくら声高々に叫ぼうが、自分たちが避けて通りたいことにチャレンジしない限り結局、挫折することになるのだ。
 
企業業績を継続的に高めるという大きな目標を達成するためにはトップは自らを“つらい立場に置く”ことがまさに求められるということなのだ。

 
文責:斎藤顕一

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