第4回:質問力を身につける
今回は情報収集の中でも特に重要な質問力についてお話しします。
問題に直面したら対応策を考える前に、まずは事実を理解するために人の話を聞いてみる
先日、人材派遣会社の社長さんと話をしているときに、その人は次のようなことを言ったのです。「今回の新型コロナで登録している派遣社員の人が不安を抱えているようで、そのために何ができるか考えているんです。給与補填や万が一解雇になった場合の保障など何をすればいいのか、競合会社の取り組みなども見ているのですが、仕事が大幅に減ったこともありなかなか悩みます・・・。」
それを聞いた僕は、「対応策を考えるのは大事だとは思うけど、まずは、派遣社員の人たちがどんなことを不安に思っているのか、どのようなことを会社に期待しているのかを聞いてみたらどうだろう?」とお話ししました。「確かにそうですね、まずは話を聞いてみます」ということで、その場は終えました。
その後、どうなったのかを聞いてみると、「相手にいろいろ質問し、自分が考えている保障や雇用の方針を直接話す機会が出来たことで信頼関係が構築され、良い口コミが広がり、仕事を止める人がいなかったのです。いや~良かったです」とのこと。
自分の頭だけで解決策を出し、完結すると、結果的に対処療法や実現性に欠けた取り組みになりがち
これは実は、多くの“優秀”な人でも陥る落とし穴で、自分の頭の中だけで解決策を出して完結してしまうのです。ある経営者は、自分の強い想いで“特定製品市場を狙う”という突然の新事業参入を通達しました。十分な市場調査や潜在顧客へのインタビューも行われず、事業展開を強引に進めた結果、新市場開拓は失敗に終わりました。自分の頭の中や一部の人だけの話を聞くだけで導き出した解決策は、対処療法だったり、実現性に欠けていたり、良い施策を導き出せません。まずは、成長機会とその機会獲得に必要な取組方を見つけるために、インタビューする(質問する)ことが重要だったというわけです。
自分の考え方の悪い癖を客観的に理解していないから良い質問が難しい
では企業の問題解決における必要な質問力について触れていきましょう。
質問といっても、自分が知らないことを聞く、理解できなことの説明を求める、などは自分なりに工夫ができます。ただ、相手の課題を聞き出し、解決の方法を一緒に考えたり新しいアイデアをお互いの対話から発見するための質問ということになると“新しい学び”が必要になります。なぜ、そのようなことが重要かというと、お客様企業の業績を高めることで、信頼を獲得することができて、その結果、自社の売上が増えるからなのです。
質問の難しさはいろいろあります。自分が聞きたいことをそのままぶつけてしまう、質問が具体的で細かすぎる、相手の応えに対して更に質問ができない、相手の質問に応えることができないなどです。なぜ、そんなことが起こるかというと、商談は”自分の利益“だけを考えて行うし、ロジック(秩序正しく考える方法)も学んだことがないし、自分の話し方、つまりは考え方の悪い癖を客観的に理解したことがないからなのです。
問題解決における“質問”は、“分からないことをただ聞く”のではなく、お互いの価値を引き出したり、新たな価値創造の取り組みといえる
では、質問する上で大事なのは何でしょうか?まずは、問題解決における“質問”は、“分からないことをただ聞く”のではなく、お互いの価値を引き出すための取り組みと認識する必要があります。そのうえで、それを実現するための質問力の基本的なことをまずしっかりと理解して実践する必要があるのです。基本的なこととは次のようなことです。
1.まずは、質問するときの目的を明確にすることです。商談も質問から始まるとは思うのですが、自分の製品・サービスを売ることではありません。相手企業が業績を上げることができない根本原因を聞きだすことで、その解決提案をすることです。相手のことを考えないで、自分の売上獲得だけの商談は、相手から嫌がられるのでNGなのです。
2.次に、相手の関心がどこにあるのかを理解します。そのためには、最初は大きな質問から始めます。例えば、どんなことにお困りなんですか?というのが大きな質問になります。相手からは、売上があがらない、利益が出ない、人がいない、などの応えが得られるでしょう。大きな質問をした場合の最初の答えが、最も大きな関心になるのです。
3.普通はそこで、大変ですね~で終わってしまう(笑)。大きな関心事が判ったのですから、なぜそれが一番大きな問題なのでしょう?と、相手の言ったことの意味を、具体的に理解する必要があるのです。そのためには、自分が納得できるまで、深堀して質問し続けることが重要になるのです。売上が大きな問題だとした場合、その原因は3通りあります。相手企業の営業活動の問題、販売商品の問題、その先のお客様の問題ですが、それだけでは解らないので、更に中身について質問をし続けるのです。
4.相手企業の問題がいろいろ解ったところで、それらが意味するところ(問題の本質)を理解するために要約が必要になります。この要約には論理的思考が必要になり、それも新たに学ぶ必要があるのです。
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