使命を示す
企業において、会社の行動の拠り所となる“使命”ではなく、与えられた仕事やタスクを「ただこなすことを良しとする」文化が、会社の活力を奪い、なんら面白みのない場所に変えているのだ。
企業の使命を決めることが出来ると、部門の使命を明確にすることが出来て、その結果、個人の役割を決めることが出来るのだ。
そうすると、個人は自由に「使命達成」のための行動を考えることが出来るようになり、達成感が生まれ、企業に活力が生まれるようになるのだ。(斎藤顕一)
【解説】
「タスク??業務??使命???って何?」と思う方もいるではないでしょうか?
では、まずはこのタスクを理解してもらうために、ある例をご紹介します。
ビル掃除のおばさんに「ちょっと、この机が汚れているのできれいにしておいてくれませんか?」とすぐ側で働いている人がお願いをしたんです。
そのおばさんは「私は窓拭きとして雇われたんで、床掃除は別の人を雇ってください」と返答したんですね。
何がおかしいか、もちろんわかりますよね。(ここで違和感がないという方は、タスク中心の仕事に汚染されているかもしれませんね。。。)
では、何故彼女はこのような回答をしたかを考えていきましょう。
彼女はタスクとして「窓をきれいにする」は与えられていたものの「床を掃くことは自分のタスクではない」と考えこの発言につながったんです。
もしここで、この掃除のおばさんが「窓をきれいにする」というタスクではなく、「顧客が気持ち良く過ごすことのできる空間づくり」を使命として与えられていたら、どうでしょう、彼女は何の違和感もなく喜んで床をきれいにしていたことでしょう。
さて、どうですか、タスクと使命の違いについて理解できたでしょうか?
多くの企業がタスク中心で社員に仕事を与え、その弊害として、「自分のタスクしかしない。他の人に協力もしない」という現象が起こっています(自分に与えられた仕事すら、出来ない人もいるのですけどね!)。
それでは、社員全員が自分に与えられた仕事をやれば、会社は良くなるのか?
それはならないのです。
部分がよくても、全体を良くする力は部分同士の協力と工夫が必要だからなのです。
このようなタスク中心の仕事の仕方は、「自分さえ良ければいい」という考えを生み出すだろうし、改良・改善、新たな創造も求められていないため、その先に成長はないのです。
では、使命とは何かというと、「やるべきことを具体的に指示しないと人はサボる」という“性悪説”に基づいた考えではなく、「人に、企業の価値観と、やるべきことの方向性を明示すれば、人は自分なりに工夫して行動してくれる」という性善説に基づいた考えなのです。
これにより人間の潜在的能力を最大限に引き出し、継続して成長する企業を可能とするわけです。
そして、今は市場が厳しいからこそ、使命に基づいた行動がすごく重要となっているのです。
文責:柴田祥子
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