顧客の利益第一主義
顧客の利益第一主義(斎藤顕一)
【解説】
「顧客の利益第一主義」の正しい意味を理解してもらうため、
僕がよく話す例をご紹介します。
ある会社の社長に「顧客の利益と自社の利益とどちらが大事だと思いますか?」
という問いかけをしたときに、その人は
「当然、自社の利益が第一でしょう。
お客さんの利益を優先したら我々は儲からなくなるじゃないですか。
社員がお客さんを喜ばせるためには、値引きをしたり、販促などのコストをかけるだろうから、
そうすると結局自社の利益率が減少することになるのでダメなんです」
と言われたのです。
僕は自社の利益をまず確保したうえで、
その枠組みの中で顧客の利益を考えるということは、
自社の利益中心であって、顧客中心主義とまったく違うと言っています。
もちろん“顧客の利益第一主義”とは、顧客の我がままに応えることでもないし、
顧客の利己主義を満たすことではないのです。
大事なことは、商品やサービスを手段として、
利他主義に徹する気持ちがあるかどうかということなのです。
その精神に顧客が感激すれば、
その商品やサービスは購入してくれることになり、
その結果、売上につながりそれが利益につながると伝えました。
実は、
「自社の利益をまず優先して、そのあと余裕があれば顧客を大事にする」
という考えは、この社長だけではなく多くの経営者が考えていることなのです。
ましてや、従業員も当然そう考えるはずなのです。
頭で考えると「顧客を喜ばせること」は重要であり、
なんとしでも実践したいことなのですけど、
ビジネスにおける行動から考えると
「自社の数値目標を絶対に達成する」という考えがより重要であり、
恐らくこれらの人にとっては次元の違う考えなのです。
同じレベルで捉えて、どちらを優先して考えるのか、
という問いかけすら、不思議に思うのでしょう。
まさに、建前と本音の世界のいい例示だと思います。
では、どうやって「顧客の利益第一主義」を実践するかと言うと
、要はお客さんを「家族であるかのごとくに大切にしよう、とまず考える」ことなのです。
相手を大切にしようとすると、実際に顧客がなにを求めているか、
期待値がどこにあるのか、
そしてそれは自社の価値観に合っているのかどうかを考える必要が出てくるのです。
顧客が本当に望んでいることを見分けるには、
「法人顧客の場合は、その会社の業績向上をどのようにすれば、
自社の商品やサービスでお手伝い出来るのかを考え、
消費者が顧客の場合は、その人の喜ぶ顔を見るためにはどうすればいいのか」を、
いつも自分の軸足としておく必要があるのです。
そして、顧客を感覚ではなく、しっかり事実ベースで分析し、
大切にすべき優先顧客を明確にして、
優先度の高い顧客を徹底的に大事にすることが求められるのです。
全ての人を顧客にはできないし、すべての顧客に満足を与えることはできないからなのです。
文責:斎藤顕一
斎藤顕一語録の著作権はフォアサイト・アンド・カンパニーにあります。
無断転載はご遠慮下さい。