問題解決の提案には工夫が必要
私が教えている大学院やE-Learningの学生からよく聞くのが、 「上司に対し自部門の問題を発見して解決策を提案しても、 “そんなことを言うならば自分で勝手にやったらどうだ”」、 とか「そんなことは言われなくても解っている」というように反応されて、 それ以上に話が進まないと言うのがある。
学生にしてみたら、本来の業務を超えて会社や部門が良くなることを信じて提案しているのに、 それを真剣に捉えてくれないのを嘆いているわけだ。
このようなことを聞くたびに、 「やっぱり問題解決者というのは、ある種の“宣教師”であって、正しいことを言っても迫害される立場にある(笑)」 ことを痛感すると同時に、そうであるがゆえに「提案し続けること」の重要性を再確認するのです。
ただ、本来の目的は「部門や会社の業績を高めることにある」のであって、 やはり提案を受けいれてもらえない限り業績は高まらない。
とすると、まず上司にその提案を納得して受け入れてもらうための工夫が必要になるということで、 特に伝え方に配慮することが重要となる。
本来、上司から期待もされていないのに、 「この部門の問題はこんなところにあるので、それを解決するためにはこのような取組をすべきと考えます」と、 いくら論理的に伝えたとしても、それを受け入れる上司というのはそう沢山いるわけではない。
あらかじめ会社から大学院に派遣されたりして、上司の期待値が「問題を発見して業績向上できる取組を提案しろ」 というところにあればいざ知らず、私の生徒の大半は“個人で自分に投資をしている人たち”であるため、 上司が知らないケースが多い。
ただ、問題解決の方法を学び、自部門の本質的な問題が見えれば見えるほど、 それを提案したくなるのは問題解決を学んだ者としては“当然の反応”だし、私自身もそれを期待している。
とするとどうすればよいのか。なぜ“受け入れられないか”をまず考える必要がある。 可能性としては、大きく2つあって、「提案内容の問題」と、「提案の伝え方の問題」になりそう。
提案内容については説得力があるかないかについて確認する必要があるが、 まず本稿では「伝え方の問題」を考えてみたい。
なぜ伝え方がうまく行かなかったのか?
部門の問題とその解決法について予期せぬ人から言われてしまったという“提案者の問題”、 話題にもなっていなかったのに急に話題にあがってしまったという“タイミングの問題”、 自分が本来やらなければならないことなのに、巻き込まれていなかったという“除け者にされていた問題”の3つがありそうだ。
この中で、3番目の“除け者問題”が一番大きいと言える。
それも問題解決能力が欠如しているとみなさあれていたから相談もされなかった場合が多かったため、 「上司の嫉妬とか保身」という問題がからんでくるので余計にややこしい。
その上司を超えてその上司に行くことは、 多くの会社でまだあまり好ましいとは考えられていないため、その上司の支持を受けることが重要になる。
このようなケースの場合は、事前に「問題解決を勉強していて、その考え方を使って部門の業績を高める方法を考えたい。 ついてはいろいろ解らないところが出てくるので、その時は教えて欲しい」、とか提案書を示して説明するときも、 「普段から上司が心配されていたことや、今までのお考えを含めて考えた結果、このような問題があることがわかりました。 それを解決する為にはこのようにすれば良いと思うのですが。 いろいろコメントをいただければ、それを反映した提案書を作成し一緒に担当役員に説明させていただくことも良いのではないかと思っています。いかがですか?」、 というようなコミュニケーション上の工夫をすることで、この問題を解決できるのではないかと思う。
大事なことは上司を味方につけて、業績を向上させる取組に一緒に参加してもらうことにあるのだ。
自分の手柄を上司と分かち合うぐらいの度量の大きさを示してもらいたいものだと思う。
文責:斎藤顕一
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