10月, 2009 |

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外部の知恵を活用する

売上が減少し始めて収益性が悪化し、近い将来においても業績向上が見込めない場合、会社は“リストラ”を決断せざるを得なくなる。
しかし、多くの会社でのリストラに向けた取組みは必ずしも成功しているとは言えない。
リストラしたのに黒字化できなかった場合もあるが、むしろリストラ実施後に活力を失いそのまま倒産してしまうケースのほうが多い。
リストラの失敗は、経営層の“弱気”もあるが、本来のリストラの意味をはき違えて削減計画だけに取り組むことからくる。
リストラは短期的に成果を出すことを目指すために、取組みの中心はどうしても人員の削減と資産の売却などになりがち。
しかしリストラの意味は“Re-structuring”(事業の再構築)であって、人とモノの削減だけを意味するものではない。
厳しい市場環境の中でも収益をしっかりと確保できる体制作りが目的であり、その目的を満たすための取組みを行うべきなのだ。

 
【解説】
 
人間は思い込みの動物であり、主観的にものごとを考えるのに慣れている。
 
客観的に考えるためには、自分を他人の立場において考えてみるということも良いが、「売上が増大しない本当の理由は、大きく分けても5通りある」というように、論理的帰結として考えてみることが出来ると大いに役立つ。
 
企業経営者や意思決定に責任のある立場の人たちが、論理的に考え、必要とされる情報を明確にし、分析方法を示すことで、多くの事実から本質的な問題を発見できるのでるのであれば、もちろん問題解決活動に取り組める。
 
もし、それらを実施する上で、“方法がわからない”とか“ためらい”があるのであれば、外部から企業変革の知恵と具体的な売上増大の施策と、それを実現するための仕組みや仕掛けに関する具体策を得ることのほうが貴重な時間を買えるし、なによりも社内に存在していなかった「問題解決のノウハウ」も獲得できる。
 
外部の知恵を検討する時には「分析方法やテクニック中心」ではなく、むしろどのように問題解決に取り組んだらよいのかの「考え方が出来ること」を重要視することが肝要だ。

 
 
企業業績を向上させるためには、市場・競争環境を今までの「事業運営の視点」でみるのではなく、「対象とする顧客の満たされていないニーズの視点」で評価する必要がある。
 
企業は自社の視点、つまりは“主観的”に市場を見ることに慣れ親しんでいるため、新たな売上げ増の施策を立案するためには、どうしても客観的に評価するスキルが必要となるわけだ。
 
社内にそのスキルを持った人材が不足しているのであれば、社内で育成するか外部に依存するしかない。
 
どれぐらい早いスピードで会社を変えていくかが業績向上の鍵となっている現在、自社で人を育てる時間は膨大になり、期待成果を引き出すためにかかるコストは「外部の知恵」を雇うよりはるかに高額になる。
 
外部の知恵を使う意味は、企業を取り巻く市場・競争環境を示し、業績を上げるための方法を学ぶ「勉強になる機会」をもらうことではない。
売上げを増大させ利益を増やすのを手伝ってもらうことなのだ。
 
さらに、共同作業をすることで、質の高いノウハウ獲得のスピードを高めることができる。
 
そのような“質の獲得”であるため、「外部の知恵」を得る際は、企業の業績が上がらない理由について熟知しており、想定される問題とその解決法についての考え方を示せることが重要になる。
 
試しに、想定される課題を投げかけて、その課題から本質的問題を類推することができるかどうかを試してみたらよい。
 
一般的なアプローチしか示せない場合は「外部の知恵」もただの(無料ではなく高額になる)「知識の提供」にしかすぎないことになる。

 
文責:斎藤顕一

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