2月, 2011 |

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営業は“初めに製品ありき”から“初めに質問ありき”に大転換する必要がある

「営業が求められていることは自社の既存製品・商品やサービスを顧客に売り込むことであること」に誰も反対しないだろう。
ただ、経済が停滞し売ることが非常に厳しい時代には、自分たちの既存製品を既存顧客に売っているだけでは会社は成長しない。
とすると自分たちが慣れ親しんで来た製品だけではなく、まさに顧客が求めている製品やサービスを売ることが重要になるのであるが、そのためにはまず既存顧客や潜在顧客から“求めているもの”を聞き出す必要がある。
ところが、営業は顧客から既存製品に関する質問に答えることができても、顧客に対して“既存製品以外のこと”について質問することや“その質問に対する顧客の答え”について、更に答えることは慣れていないので出来ないのだ。
これは“顧客の本当のニーズを満たすことが重要”と言われながら、最前線にいて顧客情報を獲得する役割を担っている営業が出来ないのだから、顧客のニーズを満たすことができず結局ジリ貧になることを意味しているのだ。
営業の質問力を強化するためには、今までの営業の“初めに製品ありき”の活動を改めて、意識・論理性・ツール開発によって“初めに質問ありき”の活動に大転換すべきなのだ。

 
 BtoBビジネスを行っている企業の営業の人たちも最近は、顧客、それも普段から窓口になっている購買部ではなく、企画やマーケティングの部門に対して質問することの重要性を認識しつつある。
 
ただ、問題は、長年“初めに製品ありき”で営業活動を行ってきた人たちにとって、“①顧客に問いかけて→②顧客から問いかけへの答えが返ってくる→③その答えにまた営業が問いかける”という一連の会話が成り立たせることが困難なのだ。
 
なぜか。最初の問いかけは準備しておけば質問できる。
ただ、次の顧客の答えの中に“自社製品に関連がありそうな言葉”が出てくると、営業の習性から“すぐ既存製品の中から類似製品を提案してしまうから”なのだ。
 
例えば、営業は「みなさんがお困りのことってどんなことなんですか?」と問いかけ、顧客の答えが「いま、困っているのはもっと小型化して重量を10%は下げたいのだ。もう少し、部品を小さく軽く出来ないか?」と問われると、営業は製品カタログを見て提案するか、テーマを自社に持ち帰ってさらに小さく出来ないかを開発と討議するという、今までと同じアプローチを取ってしまうのだ。
 
既存製品を売ることに慣れた営業にとっては「すみません。なぜ小型化が重要なのですか、なぜ10%なのですか?」という質問が出来ないのだ。
 
これは“自分達の製品をなんとしてでも売るのだ”という意識ではなく、“なんとしてでもお客さんの抱えている問題を解決してあげて、それで売上げを上げるのだ”という意識に変えない限り無理なのだ。
 
また今まで既存製品に関する“具体的な質疑応答”しかしてこなかった人たちに、「御社の業績をあげたり生産性を高めたりする上で困っていることはどんなことなのですか?」という“そもそも論に関わる抽象レベルの高い質疑応答”が出来るようになるためには、目的に戻って考える方法を教えてあげないと難しいのだ。
 
ただ、顧客の業種・事業領域や企業規模などによって“困っている内容”は何通りかに分類できる可能性が高い。
 
そのため、営業がすべき質問や、顧客の答えや問いかけに対する営業の答え方をある程度想定できるので、ツール化しておいて訓練をつむことで、営業の質問力を今までよりも高めることは出来るのだ。

 
文責:斎藤顕一

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